◆角膜移植◆

T はじめに

 角膜は、目の入口にあたる黒目の部分で、瞳の色が透けて黒っぽくみえますが、実際は透明な組織です。奥にある虹彩、水晶体とともに、入ってきた光を網膜に集光してピント合わせをするレンズの働きがあります。この角膜が濁ったり、形がゆがんで視力が極度に悪化した場合、角膜移植の適応となります。「水疱性角膜症」「角膜変性症」「円錐角膜」「角膜の外傷」などです。このうち、水疱性角膜症が移植を受ける疾患の第1位です。患者さんの病的角膜の中心部を取り除き、アイバンクから提供されたドナー角膜と入れ替えます。移植をしたら「おしまい」ではなく、術後感染や拒絶反応の有無を定期的に観察しなければなりません。

U 角膜の構造と内皮の機能

   

 角膜は、血管のない透明な組織で、直径約11mmのやや横楕円形、厚さは中央部で約0.5mm、周辺部で0.7mmです。表面は涙で覆われ、「上皮」「ボーマン層」「実質」「デメス膜」「内皮」の5層構造からなります。最内層の内皮細胞は、約50万個(1mm2当たり3000個以上)あり、角膜後面を敷石状に1層で覆っていて、房水に接しています。図1に示したように、バリア機能、ポンプ機能という2つの機能があって、角膜の水のくみ出しを担い、その結果、実質は含水量を一定に保ち(78%)、透明性を維持しています。非常にデリケートで、増殖能をもたないため、障害を受けると脱落して欠損し、デメス膜が前房に露出してしまいます。このままでは困るので欠損部は周りの細胞が薄くなって、変形したり大きくなったりして埋めますが、あまりにもたくさん欠損してしまう(1mm2当たり500個以下)と、残った細胞で全体を埋めつくせなくなり、実質内に房水が流入してしまいます。角膜は分厚くなり、角膜のコラーゲン線維の規則正しい配列が乱れて、濁ってしまいます(水疱性角膜症)。もともと変性症や障害などの種々の原因で内皮機能が低下している場合は、自然経過で発症したり、白内障手術、レーザー虹彩切除術などが引き金となって発症します。

V 角膜移植の適応と術式

   

 角膜移植術を受けるには、@光を感じる程度の視力がある、A涙液分泌が保たれている、B眼圧のコントロールがついている、C患者さんに手術のみならず、術後管理を受けられる態勢が整っている、ということが最低条件です。水疱性角膜症や、感染、変性症、外傷などによる角膜の混濁以外に、円錐角膜のように角膜の形状がとんがり帽子のように変形したもの、感染や拒絶反応による角膜穿孔なども角膜移植の適用となります。図2に代表的な術式を示します。

 

全層角膜移植術(PKP)
 角膜の5層全層を置換します。内皮細胞のたくさんある新鮮なドナー角膜が必要です。水疱性角膜症や外傷、感染後の実質深層混濁のあるもの、円錐角膜などに行われます。

表層角膜移植術(LKP)
 混濁が実質層に限局しているような場合、混濁した深さまで角膜切除を行い、同じ厚みの移植片を作製して移植します。欠点は、移植片とレシピエントヘッドの接着部が濁る(層間混濁)ために視力が出にくいことです。最近では、表層1/3までの混濁であれば、エキシマレーザーによる「治療的角膜切除術(PKT)」が選択されます。混濁部をレーザーで削りとるだけで、ドナー角膜は必要なく、視力もよく出ます。

深層角膜移植術(DLK)
 実質深層の混濁で内皮機能が健常な場合、実質切除をデメス膜まで行い、内皮とデメス膜のみを残して、そこに内皮を剥がした角膜全層を移植します。そのため、ドナー角膜の内皮の状態が悪くても使用できます。LKPの欠点である層間混濁がなく、視力もよく出ます。

 円錐角膜に対する深層角膜移植
 円錐角膜は角膜の中央部が前に突出してくる比較的若い方(約15歳〜35歳)に多い病気です。突出の程度が軽い場合はコンタクトレンズで視力矯正が可能ですが、前方への突出が高度になると角膜移植以外に視力が得られる方法はありません。これまで、円錐角膜に対しては全層角膜移植を行うことが普通でしたが、全層移植には術後の拒絶反応の危険と長期的な角膜内皮の減少という問題があり現在でも解決されていません。若い年齢で移植をお受けになる患者さんの将来を考えると長期的にみて合併症の少ない深層角膜移植を行っています。

 以上は角膜中心部に対するものですが、そのほかに「角膜上皮形成術」「角膜輪部移植術」などの角膜周辺部を処理する特殊な術式があります。

W 拒絶反応について

 移植後の2〜3割の症例に起こるといわれており、大半の症例が術後3ヶ月以内に発症します。具体的には、視力低下、充血、疼痛を訴え、診察時に前房内炎症と移植片に拒絶反応線やびまん性後面沈着物がみられ、実質浮腫をきたします。早期に発見して適切な処置をすると透明に戻るので、気づいたらすぐに受診することが大切です。そして、たとえ拒絶反応が起こり視力不良となっても再移植も可能です。

X ナー角膜

 日本では提供角膜が不足しており、手術を数年間も待ち続けておられる方が多く、1年間に待機患者の1/3しか手術を受けることができないのが現状です。
 そこで、当院では米国アイバンク(Northwest Lions Eyebank)の協力のもと海外ドナー角膜としてアメリカから角膜を空輸して、角膜移植に使用しております。
 アメリカは人口が多いこともあり、注文すると設定した手術日にほぼ合わせてドナー角膜を送ってくれますので手術を予約して行うことができます。 

 国内および国外のドナーのかたの角膜を移植する命のリレーを通し、1人でも多くのかたの視力回復を願っています。

Y 費用について

 この度、真星病院にて角膜移植術を受けられる場合の当院での費用につきまして、の概略をご説明申し上げます。

  1. 角膜移植手術を受けられる患者様の入院期間は2週間15日間(手術前日より入院)を基本とさせていただいております。しかし、病状により医師が退院不可能と判断した場合は、入院期間が延びることがあることをご了承願います。その場合は主治医から病状を含めて説明があります。
  2. 角膜移植を受けられる患者様は術前後の安静、感染予防が重要ですので当院におきましては特別室(1日21,000円)に入院していただきます。
  3. 角膜は輸入角膜でアメリカのドナーから提供されたものを使用させていただきます。事前に厳格な検査を受けたものであり、国内のドナーと遜色のない安全なものでありますのでご安心下さい。
  4. 手術前に手術での安全を確保するために、事前に全身検査をさせていただきます。結果により治療の必要が生ずる場合があります。

 以上が費用の概略であります。

 健康保険での自己負担が1割、3割の場合を想定して最低必要とされる負担例を提示させていただきます。自己負担につきましては所得に応じて増減する場合がございますので市町村および関係機関に事前に必ずご相談下さい。(自己負担限度額等が変更になっておりますのでご注意願います。)

項目 金額 1割負担 3割負担
角膜移植術 398,000円 39,800円 119,400円
15日間入院基本料 254,650円 25,465円 76,395円
15日間食事負担
(15日間3食で算出)
1食につき260円 11,700円 11,700円
健康保険負担分計   76,965円 207,495円
15日間特別室使用料 1日21,000円 315,000円 315,000円
保健適用外自費分計   315,000円 315,000円
特殊器具他   80,000円 80,000円
基本費用負担合計   471,965円 602,495円

*概算ですが、上記を含めまして総額で

1割負担の方は約50万円

割負担の方で約65万円

の費用をお考え願います。


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